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2020年度 特別支援教育連続講座 第2回

学校と家庭との教育連携の一環として、今年度も特別支援教育連続講座を実施しています。第2回目は、元南山大学人文学部准教授 本校スクールカウンセラーの吉橋由香先生(臨床心理士・公認心理師))をお迎えし、2021年3月5日(金)に実施いたしました。テーマは、「発達に凸凹のある子の学び方について考えよう」というものでした。子どもの発達は、いくつかの領域(能力)に分けて考えることができます。例えば、社会的スキル、言語力、運動能力、視知覚能力、書く能力...などです。誰にでも発達の領域による得意・苦手はありますが、特に得意・苦手の差が大きい、つまり発達に凸凹がある子どもがいます。今日、発達障害と言われるようになった子どもたちも含まれます。今年度は、コロナ禍の状況により、オンラインでの講座開催となりました。

お話の概要は以下のようなものでした。 

まず、大きく分けると3点について話をしていただきました。

  • 発達に凸凹がある子の気持ち
  • 支援の階層性
  • 情報の処理の仕方の理解

「発達に凸凹がある子の気持ち」として、『目に見える行動上の症状に起因する生活上の困難』→『環境によるミスマッチ 叱責』→『二次的な心の問題』という傷つきの流れについて教えていただきました。そのため、支援の方向性としては、「二次的な問題を予防し、自立して健康的に生活していけるようにすること」だとのことでした。

そして、「支援の階層性」として、①理解・啓発と環境調整 ②子ども自身のスキルの獲得 ③高次の自己理解 と段階を追って考えるといいとのことです。最初は、周りが理解し、できる環境調整を行い、次に本人自身のスキルの獲得を目指し、最後に、自分の得意さ・苦手さを理解した上で、新しいコミュニケーションが生まれるようにするイメージです。

次に、「情報の処理の仕方の理解」として、人の認知機能を[情報入力][情報処理・記憶][出力・利用]3つのプロセスで説明していただきました。それぞれのプロセスで、『入力しやすい情報源』、『理解・整理しやすい情報処理形式』、『取り組みやすい出力方法』があるということです。具体的には、『言語的・聴覚的な情報が得意』、『視覚的な情報が得意』、『体の感覚による情報が得意』という3つのタイプが、それぞれのプロセスであるわけです。その中で、親が得意な認知の仕方と子どもが得意な認知の仕方のミスマッチにより苦しい状況も起こります。子どもをよく見て、子どもが得意な方法を理解し、アプローチすることが必要になります。

講演後、質疑応答があり、先生との対話の中で以下のようなことが話題になりました。

「字が歪んで見える等の認知特性があった場合、本人にとっては、最初からある感覚のため違和感を覚えないと思うが、どうやって気づくのでしょうか」との質問に対して、「よく観察して、子どもの認知特性を理解しようとする視点が大切です。」とのお話がありました。

「また、親として、子どもをよく観察して、理解していこうとすることは分かったが、親も余裕がなくなることが多いけれども、どうしたらよいのでしょうか」との質問もありました。

この質問に関しては、保護者だけに任せるわけではなく、本校の教育相談担当者も、また、吉橋先生もスクールカウンセラーとしてかかわっておられるので、共に考え、子どもへの支援だけではなく、保護者の気持ちも一緒に支えられるような学校にしていきたいとの話題が出て、講演が締めくくられました。また、発達の凸凹は、特別な子にあるのではなく、私たちも含めて、それぞれの人にあるものだとの確認もされました。それぞれのお子様の発達の凸凹を見極め、それぞれのお子様の特性を理解しながら、学校と家庭が手を携えて、大切なお子様を育てていく学校になりたいと強く思いました。