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2021年度 第1回子育て支援講演会

 5月19日(水)の子育て支援講演会に南山大学人文学部心理人間学科講師の青木剛先生をお招きして、「私が考える子育てに大切な保護者の心のもち方」というテーマでZoomで開催しました。最初に自然の力や災害について取り上げられました。そして、赤ちゃんの研究を複数取り上げ、ボルビィによる愛着の大切さや愛着がもてない時のマターナル・デプリベーションが子どもの発達に深刻な影響を与えることについて説明していただきました。これによると赤ちゃんは、あたたかい愛情に包まれた中で成長することが大切だと言えます。

 ただ、そのような状態は、自然ではなく、時に母親も不安定であったり、感情的なことがあったりするわけです。そのことについて青木先生は、イギリスの精神科医ウイニコットの言葉を取り上げます。「good enough mother(ほどよい母親)」です。

 この「ほどよい母親」であることは、母子一体と感じている赤ちゃんが、自分の思い通りにならない体験を通して、母子分離のきっかけになるために必要だとのことです。この考えによると常にあたたかい気持ちをもって、子どもに接することができない面があっても肯定的に考えることができるように思います。

 もちろん、母親が心の中に入っていくためには、できるだけあたたかな状態でいるという安定的な恒常性は大切だとのことです。その上で、母親の不機嫌に付き合うようなとらえ方は子ども達を成長させる面もあることを、ご自身の子ども時代を振り返って語ってくださいました。自然になぞらえると私達を癒してくれる自然も時に災害を引き起こすこともあるということでしょうか。

 そして、心理的な成長について語ってくださいました。パーソンセンタード・アプローチの立場に立つと成長には、「無条件の肯定的な関心」、「共感的な理解」、「自己一致」が必要だとのことです。そして、子育ての成長は、子どもだけではなく、親の成長も考える必要があると言われます。その例として、母親が、イライラして顔が引きつった状態で話を聞いても、子どもには顔が引きつっていることが伝わってしまうのではないかと伝えられました。また、イライラした気持ちを隠している方が、ストレスも増大するとの研究も示していただきました。

 自分が実感している気持ちを受け入れ、その上で、子どもとかかわることで、子どもを受け入れることにもつながっていく、そのために、小学校には子育て支援グループもあると子育て支援グループについての意義についてもふれていただきました。

 講演会の後の質疑応答では、反抗期の子どもへのかかわり方、子どもがしてはいけない行動をした時のかかわり方など具体的な悩みに対して、青木先生の体験談を交えた率直な気持ちを伺うことができました。司会の大島から自分の実感を味わいやすくするためのヒントについて伺うと、自分が好きなことをしている時やリラックスしてお風呂に入っている時などに、自分の感じを味わうのはどうかとのアドバイスをいただきました。

 日ごろ、あたたかい愛情深い母親であり続けるとのプレッシャーを感じておられるお母様方にとって、「いい母親でいられないことも肯定的な面があること」、「自分の実感を味わいながら子どもと向き合うこと」という視点は、「いい母親でいなくては」との理想からのとらわれを解消し、自分の実感を大切にした子育てのきっかけになるような講演会になったように思います。(文責 家庭連携部長 大島利伸)